コバヤシ ハルキ
  小林 春樹   東洋研究所 東洋研究所   教授
■ 標題
  「中国史上における『面縛』の機能と性格、およびそれらの変遷について」
■ 概要
  中国においては古代から近世に到るまで「面縛」という身体儀礼が存在した。面縛は種々の場面において実行されるとともに、下記のようなさまざまな役割を担ってきた。1.前方の者から後方の者までを物理的に一列に結ぶことによって彼等の散逸を防止するための手段。2.捕縛者が、捕虜に対してみずからの思い通りの行動をとらせるための拘束手段。3.捕虜や反乱者に対して詰問したり、その逃亡や抵抗を防止するための手段。4.杖刑を円滑に執行するための身体的拘束手段。5.帰順の意志を表明するための身体的儀礼。6.自首の意志を表明するための身体的儀礼。7.降服の意志を表明するための身体的儀礼。8.「亡国の礼」の一環を為す身体的儀礼。以上である。これらのうち面縛の原初的形態と役割を留めているのは1.の場合であり、逆に完成形態を示す事例は8.であると考えられる。また1.から8.までの事例に共通して見出される面縛の物理的実態は、人間を何らかの方法によって一列に並べて散逸、逃亡、抵抗などを不可能にするというものであり、社会的性格や機能は、面縛を行なった者に対する生殺与奪の権が、それを受容した者の手に移譲されたことを身体的に表現することにあった。そのような面縛は、或る行為が赤心に由来することを示す身体表現とされる「肉袒」と相俟って、中国史上において対立関係を「外面的」、「形式的」に止揚し終結させる機能を果たしてきたのであって、それが広汎かつ長期にわたって行われてきたという点に鑑みれば、面縛が果たした役割は「禅譲」以上に中国史上において大きかったとさえ言い得る。
  単著   「東洋研究」第155号(レフェリー制)(194頁/123~157頁)   大東文化大学東洋研究所刊行      2005/01


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.