ノザキ ヒロユキ
  野崎 裕之   スポーツ・健康科学部 看護学科   助教
■ 標題
  精神科病棟における災害時感染症対策の実態に関する研究
■ 概要
  【はじめに】精神科長期入院患者は、自己衛生管理が不十分な点や身体合併症を抱えていることが多く、さらに閉鎖的環境によって平常時でも感染症に罹患するリスクが高い。そして、災害等で発生するライフラインの遮断によって感染症リスクが増強する傾向があるが、現時点で精神科病棟に特化した災害時感染対策マニュアルは見受けられない。【目的】災害発生時の精神科病棟における感染対策の実態を明らかにし、感染対策マニュアルの構築に資する基礎資料を収集する。【方法】研究方法は、質的記述的方法とした。研究対象施設は、東日本大震災地域と熊本地震地域の精神科病棟を有する8施設であり、被災当時に実務的に感染対策を行っていた看護師11名であった。調査方法は、研究対象者への半構造化面接法によるインタビューを行い、①被災当時の施設独自の感染対策、②被災当時の感染症発症の有無の実態、について聴取した。分析方法は、インタビューの内容を逐語録におこし、その全データを検証した。【倫理的配慮】本研究は、大東文化大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した[受付番号(2018-006)]。調査にあたっては、研究の目的、方法、研究協力の任意性、研究協力同意後の撤回の権利、研究協力が得られなくても不利益を被らないことを説明した。【結果】熊本地震地域においては、自施設周辺施設が機能不全に陥らなかった経緯もあり、搬送により入院患者の感染症発症は見受けられなかった。東日本大震災地域では、沿岸部のA施設以外の周辺施設も機能不全に陥ったことから、近隣の体育館に避難した後、低体温症で20名が肺炎に罹患し、10名の死亡事例があった。また、A施設では、がれきを燃料に沢水を沸かすなどして、感染対策を行っていた。また、被災時に支援者が精神科病棟に感染対策等の支援に入ることで、さらに被災した精神疾患患者の精神状態の不安定につながった事例もあった。なお、今回調査した全8施設とも、災害時に特化した感染対策マニュアルは現存しなかった。【考察】災害規模によっては、周辺施設が機能不全に陥らない事によって感染症の拡大を遮断できる。しかし、大規模災害時は最低限の物資のみで感染対策を行う必要があり、さらに精神科の特徴を踏まえた支援のありかたを検討していく必要性も示唆された。【結論】今後、本調査範囲を拡大し、精神科に特化した災害時感染対策を構築していく必要性がある。
  野崎裕之、吉村直仁、北田志郎、村田ひとみ
  共著   第50回 日本看護学会 看護管理 学術集会 抄録集   日本看護学会   50,196-196頁   2019/10


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.